受けつがれる「思い」とは「よき時を思う」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

これまでずっと読みつづけている作家は何人かいるが、この方もそのひとり。久しぶりに新刊が出たので、さっそく読んでみた。

29歳の綾乃は、90歳になる祖母の徳子から赤銅色の端渓の硯を譲られる。16歳で最初の結婚をした徳子は結婚後わずか2週間ほどで出征した夫を失い、教師となったあと綾乃の祖父と再婚した。逸品の硯ばかりでなく、来歴を持つさまざまな品物を孫たちに譲り始めた祖母は、90歳の記念に、かつての教え子である一流フランスシェフの手による家族のための豪華な晩餐会を開く。

物語の底に流れるテーマはおそらく「受けつぐ」ということ。それは「モノ」ではなく「思い」。来歴は「物語」であり、人が何者かであるかを示すもの。人によって意味を与えられるものだ。本書の中で、ある「思い」を持って家族のために徳子が開いた豪華絢爛な晩餐会は、人の晩年の仕事としては最高のものではないだろうか。そして、「思い」を受けつぐのは何も血縁だけとは限らない。誰かがそこに注いだ「思い」は、きっと次につながっていくと信じたい。

宮本輝 よき時を思う 集英社

波乱万丈の人生もお風呂があれば大丈夫「湯あがりみたいに、ホッとして」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

人の職歴はさまざま。たまに、「え、それはまたどうして?」と思うような経歴の人を見かけることがあるが、この本の著者もそのひとり。有名大学の大学院で建築を学んだあと、設計事務所で建築家を目指していた著者が、銭湯の番頭になったいきさつを知りたくて読んでみた。

双葉社の文芸総合サイト「カラフル」に掲載されたエッセイを書籍化したもの。「銭湯編」「生活編」「サウナ編」「絵描き編」のテーマ別に、著者が設計事務所から銭湯に転職したいきさつや、大学院時代の思い出、銭湯での仕事を経てイラストレーターとして独立するいきさつなどを紹介。最近ブームのサウナへの愛も熱く語られ、「情熱大陸」への出演やドラマ化の裏側もちょっぴり知ることができる。

まず、冒頭の銭湯の図解に圧倒。思わず隅々までじっくり見入ってしまった。銭湯に関するいくつかの思い出がよみがえる。最初に行った銭湯、以前に住んだ家の近くにあった銭湯。そういえば、最後に銭湯に行ったのはいつだっけ? それぞれの立場や生活はひとまず置いて、だれもがハダカで一息つく場所、それが銭湯。エネルギー価格高騰の昨今だが、なくならないでほしい。

塩谷歩波 湯あがりみたいに、ホッとして 双葉社


シニア女子のバディ・ミステリ「死ぬまでにやりたいことリストvol.1 真夜中の女子会で事件発生!」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

「死ぬまでにやりたいことリスト」をテーマにした作品はけっこう多い。これもそのひとつ。ブリッジクラブの平均年齢70代の5人が事件にアプローチしていく。

ご近所の仲良しグループ「サマーリッジ・ブリッジクラブ」の5人は、12年前、60歳になった記念に年齢と同じ60個の「死ぬまでにやりたいことリスト」を作成。以来、ひとつずつ達成してきて、残ったのは人に言えない恥ずかしい願いごと。いよいよそのひとつ、「裸で泳ぐ」を達成するため、真夜中のプールにやってきた5人は、死体を発見してしまう。これもリストにある「殺人事件を解決すること」を達成すべく、5人は捜査を開始するが……。

一度は作ってみたい「死ぬまでにやりたいことリスト」。きっと1人ではできないこともあるはず。そんなときに、リストを共有できる仲間がいることはとても大事。著者は専業主婦で、この作品がデビュー作だ。2作目の「恋人たちの橋は炎上中!」も邦訳済。次回はどんな事件か楽しみ。

エリザベス・ベローナ 子安亜弥訳 死ぬまでにやりたいことリストヴvol.1 真夜中の女子会で事件発生! コージーブックス 

翻訳が待ちきれない!「マクベス巡査シリーズ1 ゴシップ屋の死」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

2019年に世を去ったスコットランド生まれの作家、M・C・ビートン。「アガサ・レーズンシリーズ」で日本に紹介された彼女の、もうひとつの代表作がこちら。BBCスコットランドの人気ドラマシリーズ第1作ということで、さっそく読んでみた。

ハイランド北部の村、ロックドゥ。その村のホテルでは、ジョンとヘザーのカートライト夫妻によるサケマス釣りスクールが開催されていた。各所から集まった老若男女の中で、ことさら鼻つまみものなのがレディー・ジェーン・ウィンターズ。スクール参加者の過去を知りグループに波風を立てる彼女が殺されたことから、村の巡査ヘイミッシュ・マクベスは、やってきたストラスベイン警察の一行を尻目に独自の捜査を始めるが……。

なんといってもマクベスの造形が秀逸。子だくさん農家の長男で、弟妹たちのために仕送りしたり、密漁した獲物を送ったりしている。卓越した推理力がありながらも、出世は望まず、一巡査としてのんびり(?)過ごしたいと考えている。身分違いの地主の娘との恋がどうなるのか、この静かな村に今後どんな事件が起きるのか、早く次が読みたい。

M・C・ビートン 松井光代訳 マクベス巡査シリーズ1 ゴシップ屋の死 文芸社


これを読めばあなたも楽観主義者?「オプティミストはなぜ成功するか」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

これまでに何度も読み返した本がいくつかあるが、これもそのひとつ。一世を風靡した世界的ロングセラー。現在は新装版がパンローリング社のフェニックスシリーズで読める。

「フロイト以来の革命的理論家」と評された心理学者のマーティン・セリグマンが豊富な研究成果をもとに楽観主義の力を解き明かした。失敗や拒絶にめげす生きていける人がいるのはなぜか、また、挫折に遭うと長い間立ち直れずに暗い日々を送る人がいるのはなぜか、その一般的な原理について説明した一冊。

この本の原題は「LEARNED OPTIMISUM」。著者は楽観主義は身につけることができると説く。そのココロは「あきらめない心」だと心得た。アメリカ流のポジティブ思考かと片づけることなかれ。この中に示された例には説得力がある。悲観主義の効用を研究しつくていないという批判もあるようだが、楽観主義にはトクがいっぱいあるらしい。ぜひ身につけて、必要な時に発揮したい。

マーティン・セリグマン 山村宜子訳 オプティミストはなぜ成功するか 講談社文庫


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